メタボリックシンドロームだと思ったら・・・ホルモン分泌不全症?

ある時から突然、太り始めてコレステロール値や血圧が上昇・・・「これは今、巷で騒いでいるメタボリックシンドロームってやつだな、仕方ない、ボチボチ運動でもするか」などと、のんきなことを言っていられない病気があります。「成人成長ホルモン分泌不全症」・・・正確な患者さんの数はわかっていませんが、国内で治療が必要な患者さんの数は約1万人と推測されています。(ちなみに「2004年国民健康・栄養調査」でメタボリックシンドロームの患者さんは約1,300万人と報告されています)

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成長ホルモン分泌は加齢で減少、60歳代では思春期の1/4〜1/5


過去に頭のケガや病気があり、急な肥満やうつには要注意


成長ホルモンと聞くと、「子供の成長期のホルモンのことでしょ」とよく言われます。確かに、成長ホルモンの分泌は思春期にピークがあります。その後、加齢とともに減少して60歳代では思春期の1/4〜1/5になってしまいます。しかし、成長ホルモンは大人になったから必要のないホルモンではなく、一生涯私たちの体の中でさまざまな代謝を調節する大切なホルモンなのです。


成長ホルモンは、タンパク質の代謝を促進して、筋肉の量を増加させたり、骨代謝を促進して骨の量を増やす働きがあります。また、脂質代謝を促進して体脂肪の分解をたすけ、コレステロール値を減らし、体を構成している成分(体組成)を正常に整える働きがあります。さらに、糖質や水・電解質などの代謝過程においても正常な代謝を調整する作用があります。


加齢に伴い成長ホルモンが減少する(正常な減少)と・・・

身体的変化 機能的変化
筋肉量の減少
骨量の減少
四肢皮下脂肪の減少
内臓脂肪の増加
筋力の低下
運動能力の低下
骨折のリスク上昇
高血圧
高脂血症
耐糖能障害
心血管障害のリスク上昇


(*四肢とは肩・ひじ・手・指・股・ひざ・足などの関節、これらを支えている骨・軟骨・筋肉・神経の総称)
(*耐糖能障害とは、糖尿病と診断されるほどの高血糖ではないものの、血糖値が正常より高い状態にあること、インスリン分泌が正常であっても、インスリン受容体の働きが鈍く体内で有効にインスリンが働かない障害)


余談ですが、米国では成長ホルモンを使えば老化防止になると、サプリメントが数多く出回っていますが、「がんになりやすい」・「糖尿病が悪化する」などの深刻な副作用が報告されていて、日本では認可されていません。


これに対して成人成長ホルモン分泌不全症の場合は・・・

身体的変化 機能的変化
筋肉量の減少
骨量の減少
内臓脂肪の増加
疲れやすい
スタミナ低下
集中力低下
情緒不安定
気力低下
うつ状態
性欲低下
皮膚乾燥
皮膚が薄くなる
体毛の柔軟化
体脂肪以外の体重減少
循環血漿量の低下
耐糖能障害
高血圧
高脂血症
骨粗しょう症
動脈硬化
筋力の低下
体力・運動能力の低下
心血管障害のリスク上昇


身体的変化については、日常的な症状が多いため、成長ホルモンが測定できる医療機関以外の場合は、なかなか診断がつかずに治療が遅れてしまう場合もあるようです。東大、東京女子医大、日本医大の付属病院、横浜労災病院、虎の門病院などの大病院では施設が整っています。または、以下のアンチエイジングドックを実施している医療機関でも調べることができます。
アンチエイジングドック 導入医療機関

 
成人成長ホルモン分泌不全症の主な原因は、成長ホルモンを分泌する脳下垂体に、以下のような器質的障害を受けた場合がほとんどといわれています。

□脳腫瘍(下垂体腺腫・頭蓋咽頭腫)

□視床下部・下垂体領域の手術後

□頭部への放射線治療後

□事故や外傷(けが)

□シーハン症候群(出産時に大量出血を起こした場合、発生することのある下垂体壊死(えし)による下垂体機能低下症)

□その他自己免疫性下垂体炎や突発性のもの(過去の脳震とう)


2006年4月に、重症成人成長ホルモン分泌不全症に対する成長ホルモンの補充療法が日本でも認可になりました。(日本イーライリリー社ヒューマトープ)視床下部下垂体に病気を持つ患者さんにとっては、保険適用になり、本当に良かったと思います。


冒頭に、ご案内した「ある時から突然、太り始めてコレステロール値や血圧が上昇」した人で、「過去に頭の障害やケガ」に心当たりのある場合は、早めに専門の医療機関を受診されることを切に願います。

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2007年01月08日 13:53